2025年大阪・関西万博:万博会場のベンチから、大阪府民による記事が読める。万博終了後、ベンチは地域へ。
2025年4月、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社(以下、H2Oリテイリング)が主体となり、林業者やデザイナー、そして大阪府民とともに活動してきた「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトのベンチが、2025年大阪・関西万博会場に設置されました。このプロジェクトは、大阪産材を使ったベンチを製作し、万博会場に設置した後、大阪各地で活用することを目的としています。
大阪の森と人をつなぐベンチ
「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトは、国内外で活躍する3名のデザイナー(佐野文彦氏、辰野しずか氏、松井貴氏)が、2024年4月に大阪・南河内の森を訪問することから始まりました。 彼らは、大阪の森林面積が全国で最小の約5万6000ヘクタールであるにもかかわらず、府全体の約3分の1が森林であるという現状を踏まえ、デザインに取り組みました。大阪の森は、まちと近い距離にあるという特徴を持ち、古くから人々の暮らしに必要な資源を提供してきました。しかし、高度経済成長期以降は木材の需要が減少し、林業離れが進むという課題も抱えています。
デザイナーたちは、「デザインのための樹」ではなく、「樹のためのデザイン」を理念に、大阪の森の現状や課題と向き合いながら、それぞれの個性を活かした3種類のベンチをデザインしました。
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Type A:一本の「樹」をありのまま(松井貴デザイン) 山にある樹の姿を想像できるデザイン。一本の樹で座面と脚を作り、ミニマムな構造で樹の変化を受け入れられる設計となっています。
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Type B:均一ではない木材に、新たな可能性を シミや節が多い木材(C材)や、利用されずに残された木材(D材)を活用。個性を活かし、シンプルな空間にも馴染むデザインを目指しました。
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Type C:樹の経過に想いを馳せる 時間とともに変化する樹の存在を感じられるよう、あえて「材料」の形でベンチを制作。乾燥工程を万博会場で行うチャレンジも行われています。
大阪府民による記事が読めるウェブメディア
ベンチには二次元コードが設置されており、コードを読み込むとプロジェクトのウェブメディアにアクセスできます。このメディアには、公募で集まった大阪府民ライターが「いのち」をテーマに企画・取材・制作した記事が掲載されています。 記事の内容は、大阪の製材所へのインタビュー、大阪の森の歴史、大阪府民へのインタビューなど多岐に渡り、ベンチに座りながら、大阪の森やいのちについて深く考える機会を提供します。
ウェブサイトには以下の記事なども掲載されています。
- 【「想うベンチ」完成までの道のりvol.01】デザイナーチーム、南河内の森へ
- 『“大阪の森”の過去、現在、未来。』
- 「5年後10年後にあらわれるんです、そのときの仕事ぶりが」〜大阪府森林組合 堀切修平さんインタビュー〜
万博後も地域で活用
このプロジェクトでは、万博終了後もベンチを地域で活用することを目指しています。既に、大阪府堺市新檜尾台小学校などへの設置が予定されています。
プロジェクト概要
「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトは、H2Oリテイリングが大阪府との包括連携協定に基づき進める「大阪 森の循環促進プロジェクト」の一環として、2025年大阪・関西万博の運営参加特別プログラム「Co-Design Challenge」にも採択されています。 H2Oリテイリングの他、株式会社スークカンパニー、一般財団法人 大阪府みどり公社がパートナーとして、なりわいカンパニー株式会社が運営協力として参加しています。 プロジェクトではベンチ制作以外にも、『大阪の森の木でスプーンを作ろう!』ワークショップなども実施しています。
まとめ
「想うベンチーいのちの循環」プロジェクトは、2025年大阪・関西万博を契機に、大阪の森の循環と人々の想いの循環を目指す取り組みです。 大阪産材を使った3種類のベンチと、大阪府民が制作したウェブメディアを通じて、来場者に大阪の森への理解を深めてもらうとともに、万博終了後も地域社会に貢献していくことを目指しています。


