橋本組が挑んだ極限の技術 大阪・関西万博ハンガリーパビリオン完成
2025年4月13日より開催された日本国際博覧会（大阪・関西万博）のハンガリーパビリオンが、株式会社橋本組、Bayer Construct Zrt、株式会社綜企画設計の共同作業により完成しました。静岡県焼津市に本社を置く株式会社橋本組は、このプロジェクトにおいて、高い技術力と精密な施工管理で重要な役割を果たしました。
パビリオン建築物の匠の技：革新と伝統の融合
ハンガリーパビリオンは、その特徴的なデザインと高度な建築技術によって注目を集めています。
「ひらひら」―風になびくファサード
パビリオンの象徴的なファサードは、「ひらひら」と名付けられたテント生地で構成されています。当初は金属が検討されていましたが、夢洲の強い風を考慮し、安全性と耐久性を重視してテント生地が採用されました。35,500枚もの、4色7種類の長さの生地が手作業で取り付けられ、風になびく様子は風鈴や短冊のように美しく、自然との調和を象徴しています。本体とは独立した斜めに建つ鉄骨柱にワイヤーを通して設置することで、有機的で温かな印象が生まれています。
精緻なドーム構造―設計と施工の技術的挑戦
鉄骨造を基盤とするドーム構造は、内部を防音仕様とし、ホール中央にはダイナミックな演出を可能にする回転ステージを備えています。外装には杉の角材をらせん状に組み上げており、この複雑な構造は3D設計による精密なシミュレーションと高度な加工・組み立て技術によって実現しました。球体ではない形状ゆえに、木材の取り付けには鉄骨からブラケットをミリ単位で延長し、さらにミリ単位で加工した木材を正確に固定する緻密なプロセスが用いられました。
短工期と多様な建材―精密な施工管理
現場乗り込みから引き渡しまで1年という短工期の中で、施工精度とスピードの両立が求められました。地下階躯体構造の設計にプレキャスト工法（PC）を採用することで、現場作業の省力化と工期短縮を実現しました。狭い敷地に地下階、ビジネス棟、ドームを同時施工する際には、常時100名以上の職人の作業を管理する必要があり、その調整には膨大な労力が費やされました。床、壁、屋根にはALCパネル、木サイディング、屋上緑化、防水デッキプレートなど、多様な建材が使用されており、複雑な施工管理が求められました。
3DCADの活用―施工精度の向上
複雑な設備システムと膨大な施工量に対応するため、レブロ（3DCAD）を駆使した設備設計が導入されました。シミュレーションによる施工現場の精度向上と緻密な工程管理を実現しました。
災害復興の象徴―福島県産資材の採用
パビリオンには、日本の復興を象徴する福島県産の建築資材が使用されています。これは、未来への希望を込めたメッセージとして、単なる建築物以上の意味を持っています。
ハンガリーパビリオンの概要：伝統と未来の架け橋
ハンガリーパビリオンは、伝統と未来をつなぐ架け橋として設計されています。過去の理解と敬意の上に未来が築かれるという考えに基づき、ハンガリーの民族音楽をテーマに、その価値を体感できる空間が提供されています。
没入型シアタースペース
パビリオンの見どころである没入型シアタースペースでは、映像と音楽を通じて、自然との深い関わりが表現されています。音楽という普遍的な言語を用いて、ハンガリーの文化と自然観を来場者に伝えています。
文化の類似点と未来への展望
ハンガリーと日本の文化に共通する「人間と自然との密接な関係」に焦点を当て、両国の類似点を示しながら、過去から学び未来を形作るというテーマを体感できる空間となっています。
株式会社橋本組の概要
創業102年の歴史を持つ総合建設企業である株式会社橋本組は、大阪万博を足がかりに世界市場への挑戦を続けています。「トリプル1,000」―社員1,000人、売上1,000億円、平均給与1,000万円―を目標に掲げ、世界の舞台で技術力を発揮し続けています。
(所在地：静岡県焼津市本町2丁目2番1号、代表取締役：橋本真典、従業員数：2025年4月時点288名)
