英国ウェールズ政府、EXPO2025大阪・関西万博で「ヘルステック&ライフサイエンスデー」開催
2025年6月24日(火)、英国ウェールズ政府は、EXPO2025大阪・関西万博の英国パビリオンにて、「ヘルステック&ライフサイエンスデー」を開催しました。本イベントは、ウェールズの主要産業であるヘルステック&ライフサイエンス分野に焦点を当て、医療技術の発展に向けたウェールズとの連携、そして研究・実証実験拠点としてのウェールズを紹介することを目的として開催されました。
ウェールズでは、低侵襲かつモバイル性の高い医療技術への移行と、それらを活用するための適切な研修提供に力を入れています。現代の医療ニーズに応えるため、従来とは異なるアプローチを進めており、今回のイベントでは医療関係者やメディアに向けて、これらの先進的な取り組みと日本との連携の可能性が提示されました。
本イベントは、「日本におけるウェールズ年(Year of Wales and Japan 2025)」キャンペーンの一環として開催されました。2025年は、ウェールズにとって日本が重要な戦略的パートナーであり、文化、教育、貿易、イノベーションなどの分野で両国の関係をさらに深める絶好の機会となっています。ウェールズと日本は過去50年間にわたり強固なビジネス関係を築いており、多くの日本企業がウェールズへの投資を選択しています。4月29日には大阪・関西万博にて「ウェールズ・デー」が開催され、ウェールズの文化、工芸、創造性が紹介されました。
ウェールズのライフサイエンス産業
ウェールズのライフサイエンス分野のイノベーションは、「連携」を原動力としています。300社以上の企業が13,000人を超える高度なスキルを持つ専門人材を雇用し、産業全体の年間売上は28億ポンドにのぼります。
ウェールズは、医療機器(Medtech)、診断、神経科学、ゲノミクス、細胞治療の分野で実績を積んでいます。大学、NHS(国民保健サービス)、政府、研究施設の連携により、医療の進展を加速させるエコシステムを構築しています。体外診断やプレシジョン・メディシン(精密医療)といった成長著しい分野における優れたクラスターが、ウェールズのイノベーションを支えています。ゲノム解析、病理診断、画像診断、そして先端治療に関する国家的プログラムを通じて、精密医療を日常の医療に組み込むことを目指しています。
ウェールズ「ヘルステック&ライフサイエンスデー」の内容
本イベントでは、ウェールズの医療システム、企業、大学の専門家が登壇し、政策、パートナーシップ、研究の分野におけるウェールズの先進的な取り組みが紹介されました。以下に、当日にウェールズ発の革新的な取り組みを紹介した企業の一部を紹介します。
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Goggleminds®(ゴーグルマインズ): AI搭載の没入型シミュレーションを通じて、医療教育の変革を目指しています。会話型トレーニングと実践的な臨床体験を融合した独自のシステムを提供しています。
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Creo Medical(クレオ・メディカル): 内視鏡外科の分野で先進的な電気手術デバイスを開発・提供する医療機器メーカーです。より安全かつ低侵襲、費用対効果の高い手術の実現を可能にする革新的技術を紹介しました。
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Fujifilm Healthcare UK(富士フイルム ヘルスケアUK): 患者中心の視点に立った医療イノベーションを追求し、医療サービスへのアクセス向上に貢献しています。最先端の医療機器を展示し、詳しい情報を提供しました。
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Llusern Scientific(ルセーン・サイエンティフィック): 尿路感染症の分子診断に特化した「治療指向型診断(treatment directing diagnostic)」を開発しています。Lodestar DX アナライザーを使用して模擬検査を行い、約5分で結果を表示するデモンストレーションを行いました。
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NHS(国民保健サービス): バイオメディカルおよびライフサイエンス分野における研究連携の機会や、「健康で長く生きる」ための社会的イノベーションに焦点を当てた発表がありました。ヘルスケア分野のパートナーが、イノベーターや企業と密接に連携しながら進めるプロジェクトを通じて、実環境での検証やスケールアップに向けたエビデンスの創出を支援する取り組みを紹介しました。
ウェールズ「ヘルステック&ライフサイエンスデー」スケジュール
1部:医療技術の発展に向けたウェールズとの連携(10:00 – 13:15)
- ご挨拶:イザベル・オリビエ教授(ウェールズ政府 主席医務官)
- 政策と取り組み:ルパ・チルバース博士(ウェールズ政府 イノベーション・ライフサイエンス)
- ウェールズにおけるヘルステック・メドテック分野の協働:ショーン・チャールズ氏(地域医療連携パートナーシップ戦略・サービス企画責任者)、マシュー・プリティジョンズ氏(ヘルステクノロジー・ウェールズ 主任研究員)
- ショーケースプレゼンテーション:
- 最小侵襲手術:トニー・トルッセル氏(クレオ・メディカル コーポレート・デベロップメント・オフィサー)
- 未来のスキル育成:アジーゼ・ナジ氏(ゴーグルマインズ 代表取締役社長兼創業者)
2部:研究および実証実験の拠点としてのウェールズ(14:00 – 17:00)
- アクションリサーチとサービス評価:ウェンディ・デアリング教授(トリニティ・セントデイヴィッズ大学、社会イノベーションディレクター)
- プレシジョンメディシン:ディミトリス・パルシモス博士(カーディフ大学 医学部 国際研究ディレクター)
- ウェールズとのパートナーシップによる在宅医療分野のAI・技術活用:アラン・エルボーン氏(マネージングディレクター)、ヒュー・シャーマー氏(富士フイルムUK 戦略・政府連携マネージャー)
- 研究とイノベーションによるインパクトの創出 パネルディスカッション(司会:ルパ・チルバース博士):イザベル・オリビエ教授、ウェンディ・デアリング教授、ディミトリス・パルシモス博士、下田 真吾特任教授(名古屋大学 大学院医学系研究科)、アジーゼ・ナジ氏
ウェールズについて
ウェールズは、イングランド、スコットランド、北アイルランドと共に英国を構成する一つの国です。グレートブリテン島とアイルランド島の北部からなる島国で、国王を元首とし、独自の議会と法律があり、外交、防衛、国税以外は自治権を有しています。
本イベントを通して、ウェールズはヘルステック&ライフサイエンス分野における革新的な取り組みと、日本との更なる連携の可能性を示しました。
