オーストリア・シュタイヤマルク州、大阪・関西万博でアートプロジェクト『Paravent History(s)』発表

2025年6月19日、シュタイヤマルク州は大阪・関西万博のオーストリア館でアートプロジェクト『Paravent History(s)（屏風のヒストリー）』を発表しました。このプロジェクトは、シュタイヤマルク州で発見された「豊臣期大坂図屏風」へのオマージュとなる現代アート作品で構成されています。

「豊臣期大坂図屏風」：プロジェクトの出発点

プロジェクトの着想源は、グラーツのエッゲンベルク宮殿に所蔵されている17世紀前半の「豊臣期大坂図屏風」です。長年、宮殿の壁の装飾の一部として見過ごされていましたが、2001年から2004年にかけて関西大学との共同修復作業により、八曲一隻の姿にデジタル復元されました。調査の結果、豊臣時代の大坂城下を描いた貴重な史料であることが判明し、「失われたお宝」として話題となりました。この発見を機に、エッゲンベルク宮殿と大阪城は2009年に友好城郭提携を締結しています。

現代アートによる再解釈：2つの作品

2組のシュタイヤマルク州出身アーティストが、「屏風との対話」をテーマに「豊臣期大坂図屏風」を現代アートで再解釈しました。

1. 『The Styrian Paravent（シュタイヤマルク屏風）』トム・ローナー（Tom Lohner）

幅4メートルの屏風作品。シュタイヤマルクの建物や自然を鮮やかに描いたもので、シュタイヤマルク産のウォールナット材を使用しています。「豊臣期大坂図屏風」へのオマージュであり、シュタイヤマルクと関西の架け橋を視覚化した作品です。

2. 『PIXEL PARAVENT – Time Travels in Clouds（ピクセル屏風絵 〜雲の合間をタイムトラベル〜）』studio ASYNCHROME（スタジオ・アシンクローム）

「豊臣期大坂図屏風」の主なモチーフを、インタラクティブなピクセルアートで表現したマルチスクリーン・デジタルインスタレーション。屏風絵に隠された「コード」を現代の造形言語に置き換え、ポエティックなビデオゲームのような作品です。この作品は、2025年6月25日から7月27日まで、東京都港区のオーストリア文化フォーラム東京にて一般公開されます（10時～16時、土日祝休館、入場無料）。

シュタイヤマルク州は、本プロジェクトを通じて「豊臣期大坂図屏風」への敬意を示すと共に、現代アートを媒介とした歴史、文化、地理を超越した対話を促したいと考えています。また、大阪城とエッゲンベルク城、関西とシュタイヤマルク州、日本とオーストリア、そして過去と現在をつなぐ文化的な架け橋となることを期待しています。

シュタイヤマルク州代表団の大阪・関西万博訪問

プロジェクト発表には、ヴィリバルト・エーレンヘーファー経済担当州参事とクリストファー・ドレクスラー州議会第二議長を率いるシュタイヤマルク州代表団が出席しました。芸術、経済、学術、観光、クリエイティブ産業の分野を代表するメンバーで構成される代表団は、大阪、東京、神戸、京都などを訪問し、経済・文化面での結び付き強化と新たな協力関係構築を目指して、分野別の会合、文化施設の訪問、講演会、関西圏の諸機関との二者協議などを行いました。

シュタイヤマルク州は、本プロジェクトを通して文化度の高さだけでなく、経済分野での強みもアピールしました。国際的なネットワークを持つ革新力の高い地域として、芸術や文化に限らず、研究、技術、産業におけるパートナーシップ提携先としても注目されています。グリーンテック、モビリティ、マテリアル、デジタル化に重点を置くシュタイヤマルク州は、ヨーロッパで最もイノベーション創出力の高い地域の一つとされ、研究開発費の対域内総生産（GDP）比は約5％にのぼります。また、約8000社の企業が輸出を行っていることから、ビジネスやパートナーシップにおいて高いポテンシャルを持っています。

基本情報

シュタイヤマルク州

オーストリア南東部に位置する州。豊かな自然に恵まれ、農業、ワイン生産が盛んです。文化・産業・科学の分野でも先進的な取り組みを行っており、州都グラーツの旧市街はユネスコ世界文化遺産に登録されています。

エッゲンベルク宮殿

グラーツにある宮殿。ハプスブルク家の重臣エッゲンベルク公によって1625年から1635年にかけて建設されました。「豊臣期大坂図屏風」のほか、建物全体が暦の数字（12、31、52、365など）に合わせて厳密に設計されていることが特徴です。現在はシュタイヤマルク州立博物館ユニバーサル・ヨアネウムが管理しています。

オーストリア大使館観光部による発表です。