2025年大阪・関西万博における高精度気象予測情報提供に向けた6者連携
2025年4月13日から開催される大阪・関西万博において、来場者への高精度気象予測情報の提供を目的とした6者連携が開始されました。連携するのは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、国立大学法人大阪大学、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)、株式会社Preferred Networks(PFN)、国立研究開発法人理化学研究所(理研)、そして株式会社エムティーアイです。
この連携では、次世代気象レーダ「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」2台とスーパーコンピュータ「富岳」を活用した高精度気象予測システムを構築し、ゲリラ豪雨による危険回避を目指した実証を行います。「富岳」による予測は、万博開催期間中の約1ヶ月間(8月5日~8月31日)限定での実施となります。本取り組みは、「2025年大阪・関西万博アクションプラン」の一つである「リモートセンシング技術による高精度データの解析及びリアルタイム配信の実証(総務省)」に基づいています。
近年のゲリラ豪雨増加と高精度予測の必要性
近年、短時間での大雨の年間発生回数は統計的に有意に増加しており、特に強度の強い雨ほど増加率が顕著です。ゲリラ豪雨による被害軽減のためには、豪雨の発生を早期に検知し、規模や位置を正確に予測することが不可欠です。この課題に対し、雨雲を最短30秒間隔で高精度に三次元立体観測できるMP-PAWRが開発されました。
MP-PAWRは上空の雨雲を詳細に観測できますが、レーダ近傍での強い雨による「降雨減衰」という課題がありました。2023年から関西で2台のMP-PAWRが稼働を開始したことで、異なる方向からの観測による降雨減衰の解消が可能となり、さらに、開発されたデータ圧縮・配信プラットフォーム「きゅむろん」により、研究機関や事業者への迅速なデータ配信が可能となりました。
大阪・関西万博における実証概要
万博期間中、兵庫県神戸市のNICT未来ICT研究所と大阪府吹田市の大阪大学吹田キャンパスに設置された2台のMP-PAWRが、万博会場を含む関西の特定エリアの積乱雲などを同時観測します。観測データは、防災科研の三次元雨量推定技術を適用し、「きゅむろん」を通じて理研とエムティーアイに配信されます。
エムティーアイが運営するゲリラ豪雨検知アプリ「3D雨雲ウォッチ」では、観測データに基づき雨雲の3D表示と豪雨予測のPush通知が行われます。Push通知には、NICTが開発したMP-PAWRデータから学習させたAI豪雨予測(AIナウキャスト)も含まれます。
理研は、万博開催中の一部期間、「富岳」を用いた気象予報モデルに2台のMP-PAWRの観測データを同化し、リアルタイムで豪雨予測を行います。「富岳」による予測結果は、「3D雨雲ウォッチ」と理研のホームページで配信されます。
「3D雨雲ウォッチ」によるPush通知内容
【2台のMP-PAWRの同時観測による豪雨予測】
- 通知内容:30mm/hを超える豪雨の可能性
- 通知時間:最大15分~20分前
- 通知エリア:吹田MP-PAWR観測範囲(大阪府吹田市を中心とした半径80km領域)、神戸MP-PAWR観測範囲(兵庫県神戸市を中心とした半径80km領域)
【「NICT AIナウキャスト」を使用した豪雨予測】
- 通知内容:30mm/hを超える豪雨の可能性
- 通知時間:最大5分~10分前
- 通知エリア:吹田MP-PAWR及び神戸MP-PAWRの観測範囲内
【「富岳」を使用した豪雨予測】
- 通知内容:30mm/hを超える豪雨の可能性
- 通知時間:最大30分前
- 通知エリア:吹田MP-PAWR観測範囲(大阪府吹田市を中心とした半径80km領域)、神戸MP-PAWR観測範囲(兵庫県神戸市を中心とした半径80km領域)
実証期間は2025年4月13日~10月13日、「富岳」を使用した豪雨予測は8月5日~8月31日の予定です。
各機関の役割
- NICT: MP-PAWRの運用、AI予測情報の提供
- 大阪大学: MP-PAWRの運用
- 防災科研: 三次元雨量推定技術の提供
- PFN: 「きゅむろん」によるデータ圧縮・配信
- 理研: 「富岳」によるデータ同化と豪雨予測、ホームページでの予測結果提供
- エムティーアイ: 「3D雨雲ウォッチ」でのデータ表示、Push通知、予測結果提供
研究支援
本研究は、スーパーコンピュータ「富岳」の計算資源の提供を受け、また、「きゅむろん」は総務省ICT重点技術の研究開発プロジェクトの支援を受けて開発されました。
株式会社エムティーアイについて
(企業概要の記述は、本文に記載されている情報のみを元に記述してください。詳細は割愛します。)
本連携による高精度気象予測情報の提供は、2025年大阪・関西万博の来場者の安全確保に大きく貢献することが期待されます。

